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[BOOKデータベースより]
『次郎物語』と台湾の間には直接的な繋がりはなにもない。台湾という地名すら出てこないであろう。しかし、湖人の主著『次郎物語』には、特に後半部には、作者の台湾での経験というものがさまざまな形で盛り込まれているように思われる。現代台湾人の著者が帝国主義下の台湾における下村校長の言動に注ぐ、ときに厳しく、ときに温かいまなざし。本書は大日本帝国のエリート文教官僚が植民地教育に挫折して内地の社会教育運動へと転向し、自伝的小説『次郎物語』『論語物語』を書き続け、帝国の崩壊後ようやく社会教育者、教養小説家へと成熟していく過程を描いている。
第1章 下村湖人との出会い
[日販商品データベースより]第2章 九州から台湾へ
第3章 台中一中ストライキ事件
第4章 台北高等学校ストライキ事件
第5章 台湾時代の下村湖人の短歌
第6章 離台後の下村湖人
第7章 下村湖人の台湾経験と『次郎物語』
終章 台湾人にわびたい
今も読み継がれている自伝的小説『次郎物語』の作者・下村湖人は、作家デビューする前、佐賀中学、唐津中学校長を経て台湾に渡り、台中一中校長、台北高校長を歴任しています。彼の台湾経験がいかなるものであったのか? 著者は『台湾日日新聞』などの史料を渉猟し、台湾人生徒による日本人炊事夫排斥運動に端を発した台中一中ストライキ、その後の台北高ストライキ、2つの事件による挫折感が、帰国後に始まった彼の後半生に深い影響を与えたことを明らかにします。理想とする教育を植民地体制下の台湾では実践することができず、「大いなる道を念じてこの島にわたり来し日を思いつつ淋し」と歌い、「虎人」から「湖人」へと改名する心境にあった湖人は、次郎の故郷と東京郊外を舞台とする『次郎物語』にも台湾≠語ってはいません。しかし、著者は「第四部には、作者の人生の転機となった台北高等学校ストライキ事件およびそのときの人物関係がはっきりと反映している」と言います。戦前日本の台湾植民政策に新たな視点を開く、作家論、作品解説です。